REALAPSのユーザー訪問
Vol.1 株式会社 石本建築事務所 設計監理部門 近藤秀彦様
株式会社石本建築事務所 設計監理部門 環境グループ 兼環境統合技術室の近藤様は、日々、利用者に寄り添った質の高い快適な光環境・視環境をひたむきに提案され続けていらっしゃいます。今回は、近藤様が入社1年目から担当された島根銀行本店(2017年竣工)で、RCSサンセットシステムを導入することになった経緯や、普段の設計にREALAPSをどのように活用されていらっしゃるかお話を伺いました。
サンセットシステムは西日と夕日の違いを探ることから始まった
私は、当時入社一年目でした。島根銀行本店の新築設計において、サスティナブル先導事業(旧:省CO2先導事業)に採択される方法として、光環境によって先進的な案が求められ光環境の提案を考え始めたのがスタートです。
まず現地調査を行いました。敷地は松江市の宍道湖のすぐ近くで、湖に沈む夕日が本当に綺麗でした。近隣の方々も、湖に沈む夕日を見に近くまで来られていて、夕日が沈むとともに帰っていく、そのような風景がとても印象的で、住民の「大切な風景」は、オフィスワーカーの方々にも大事なのではないかと考えました。一般的にオフィスでは、夕方には西日を遮るためにブラインドを下すことが多いです。そこで本件では、宍道湖に沈む綺麗な夕日をオフィスからも積極的に楽しめて、かつ快適性を保って光環境・視環境を作っていこうとしたのが始まりです。
同じ西に沈む太陽でも、「夕日」と「西日」には違いがあると考え、VTLに相談をし、実験を重ねながらサンセットシステムを作っていくことになりました。このような試みは、設計側が提案してもなかなかお施主さんの理解を得られないことが多いのですが、今回の提案はお施主さんである島根銀行様にとっても大事な景色を取り入れることで、賛同していただきました。
光制御のエンジニアとともに作り上げた喜び
サンセットシステムは、屋外に設置する立川ブラインド工業(株)製の「ソラミ」を用いて天空を測定し、得られた情報から晴曇天判断とグレアの評価を行っています。サンセットシステムは、先進的な技術ですから、実験や実測を繰り返しながら、ゼロから作り上げていく必要がありました。
まず、宍道湖に沈む太陽の主観評価から始めました。日没の10~15分前から、太陽を直視してもそこまで眩しくないと感じられたので、このタイミングで、夕日が西日に変化すると判断しました。しかし、実際にこのシステムを導入する現場は、8階から10階の屋内で、夕日がどう見えるのか予測がつきません。そこで、東京都浜松町の貿易センタービルの展望台から太陽の測定を実施し、天空の輝度分布や太陽高度から、否定的に捉えられる眩しい西日と、肯定的に受け入れられる眩しくない夕日を物理的に見分ける方法を被験者実験を通して模索しました。
得られた実験結果をもとに、(株)石本建築事務所、VTL、立川ブラインド工業(株)、(株)ジェイ・アンド・エフの4社が協力してこのシステムを完成させました。これまで、照明制御はメーカに任せる場合場多かったのですが、共同でシステムを作り上げていく過程の面白みを実感じました。
これからもタスクアンビエントを追及していく
島根銀行本店ではタスクアンビエント照明方式を導入していますが、設計当初はお施主さんから制御システムとタスクアンビエントの両方を導入することを不安がられました。
こういった不安感を払拭するために、(株)石本建築事務所ではREALAPSを導入し、ほとんどの案件で昼光や人工照明シミュレーションを行い、明るさの分析を行っています。
現在も、私が担当している物件では、タスクアンビエントを積極的に導入した提案を行っています。同一の居室内で、①全般照明の例、②全般照明を一部間引きタスク照明を組み合わせた例、③タスクアンビエントの例といった複数のシミュレーションをREALAPSで行い、実際の明るさを確認できるREALAPSの「リアル・アピアランス画像」を用いてタスクアンビエントでも充分な明るさが確保できることを説明しています。
また、「リアル・アピアランス画像」を、プロポーザルなどに用いるCGパースを作成する際の資料として用いることもあります。これまではイメージでしかなかったCGパースですが、REALAPSのシミュレーションのデータと組み合わせることで、リアリティを向上させることができます。
このように、きちんとしたタスクアンビエントの設計には、視覚的な空間の明るさの確認と数値的な裏付け、グレアといったまぶしさの評価などができる、REALAPSが非常に有効なツールだと感じています。これからもREALAPSを活用して、質の高い快適な光環境・視環境を提案していきたいと思います。
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