照度設計から“アピアランス設計”へ

なぜ輝度設計が必要か

VTLの照明設計の特徴は照度ではなく、輝度を使っているところにあります。なぜ輝度を使う必要があるのでしょうか。

Interior of the Kresge Chapel, Massachusetts Institute of Technology

この写真は、エーロ・サーリネンの設計したMITチャペルの「舞い落ちる光」です。天井に穴が開いていて太陽光が差しこむ仕組みになっています。照度を測ると天井近くのほうが高い値を示しますが、この写真では私達は床に近いほうが明るく感じます。なぜなら、吊下げられた反射板の数が下のほうが多く私達の目はそこで反射された光(輝度)を感じとっているからです。つまり私達の目が感じ取るのは照度ではなく輝度です。このことから、照度ではなく輝度での設計が大切であることが分かります。

「明るさの感覚」は本来は「輝度」で決まる。

照度はモノに当たる光の量で輝度は目に入る光の量です。
ですから、明るさの感覚は輝度で決まるといえます。

明るい空間にはたくさんの光がある?

ところで、明るい空間にはたくさんの光があるのでしょうか?
こちらのように室内と曇りの屋外を比較してみます。室内の水平面照度は500lxであるのに対し、屋外では7000lxもあるのに明るく感じません。曇りの日の屋外には、大量の光があるのに明るく感じないという現象は、輝度の「順応」という効果によるものです。私達の目はその場の輝度に順応するため、大量の光がある時に必ずしも明るく感じるというわけではありません。

同じ色でも明るさが違う?

こちらの画像をご覧ください。
これは背景が黒いものと白いものの上に同じ灰色の紙を置いたときの輝度画像です。
真中の灰色の紙の輝度は同然ながら同じ輝度になっていますが、私達は暗い背景に置かれた灰色の紙のほうが明るく感じます。背景によって色の印象が変わるこのような効果を輝度の対比効果といいます。この輝度の対比効果は「見え方」に影響をあたえます。

輝度設計からアピアランス設計へ

このように「輝度」は重要ですが、実際に私たちが感じる明るさ知覚と一致しません。
なぜなら、今までご紹介したように、輝度は、順応や対比の効果によって、私たちの見え方に影響を与えるためです。そのため、順応や輝度の対比効果など、視覚特性を考慮した新しい照明設計が必要となります。それが『アピアランス設計』です。

輝度から「感じる明るさ(明るさ尺度値)」へ

VTLでは、「輝度」を「感じる明るさ(明るさ尺度値)」 へ落とし込むために、コントラストプロファイル法とウェーブレット変換という画像変換法を用いています。明るさ尺度値(NB値)は、普通に使う形容詞を用いて「とても暗い」から、「とても明るい」までの1から13の13段階で表します。この数値をNB値といいます。

「感じる明るさ」を見える化する

このような方法で「感じる明るさ」を見える化したものが、「明るさ画像」です。
まず、先ほどの黒と白の背景の画像ですが、左の図ように黒い背景が4cd/㎡程度、白の背景が100cd/㎡程度、中央の灰色が両方とも20cd/㎡程度になっています。これを右の図のように明るさ画像に変換すると、黒い背景の方が中央の灰色を明るく感じると評価されています。

このように明るさ画像は、「感じる明るさ」を見える化することが可能です。

アピアランス設計の手法

以上ご紹介して参りました技術を用いたものがVTLのアピアランス設計です。アピアランス設計では、まず、3次元で空間のシミュレーションを行い輝度画像をつくります。それを画像変換法を用いて輝度の順応効果と対比効果を考慮し人が感じる明るさ、つまりアピアランスを推定します。こうすることで、照度設計から輝度設計をへてアピアランス設計への展開が可能になります。